なお4万1000人避難 人口流出、伝承に課題―東日本大震災、11日で10年

2021年03月10日20時32分

【図解】東日本大震災 被害の概要

【図解】東日本大震災 被害の概要

  • 東日本大震災による犠牲者の名前が刻まれた慰霊碑に花を供え、一礼する男性=10日午後、宮城県女川町
  • 東日本大震災の発生から10年となるのを前に、浜辺で行方不明者の捜索を行う岩手県警の警察官ら=10日午前、同県釜石市
  • 東日本大震災から10年となるのを前に、訪問者が絶えない宮城県南三陸町の防災対策庁舎=10日午後

 国内の観測史上最大となるマグニチュード9.0、最大震度7を記録し、東北地方沿岸部を中心に巨大津波による甚大な被害をもたらした東日本大震災は、11日で発生から10年となる。死者、行方不明者は2万2000人を超え、全国で今なお4万1000人以上が避難生活を続けている。

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 政府は今後5年間を「第2期復興・創生期間」と位置付け、東京電力福島第1原発事故の影響が続く福島県の復興や、被災者の心のケアなどに取り組む。高齢化や人口流出など被災地の実情に応じた丁寧な支援が求められる。時の経過による風化の懸念も指摘され、記憶や教訓の伝承も大きな課題となる。
 警察庁などによると、大震災の死者数は12都道県で計1万5900人、行方不明者は6県で2525人。震災後の傷病悪化による「震災関連死」を合わせた犠牲者は2万2000人を超える。復興庁のまとめでは、全国の避難者は震災直後の47万人から4万1241人(2月8日現在)まで減った。
 プレハブ仮設住宅の入居者は、ピーク時の11万6565人から2月末現在で岩手、福島両県の計24人まで減少。住まいの再建のため岩手、宮城、福島の3県などで計画された災害公営住宅計2万9654戸(原発事故の避難者向けを除く)や住宅用宅地は全て完成した。
 3県では公共施設の整備や集団移転の進展で、新しい街が形作られている。一方、岩手県陸前高田市や宮城県石巻市などの沿岸部では、土地のかさ上げ工事などに時間がかかり、避難先で生活再建を果たすなどした住民が戻っていない。
 インフラ面では、鉄道路線と道路がほぼ復旧。青森県八戸市から仙台市の沿岸部を結ぶ全長359キロの「三陸沿岸道路」は年内に全線開通予定で、物流や観光の活性化が期待されるが、新型コロナウイルスの影響が影を落とす。
 福島第1原発では史上最悪レベルの炉心溶融(メルトダウン)事故が発生し、周辺に大量の放射性物質が飛散した。東電は1~4号機の廃炉完了まで30~40年を見込んでいるが、難関とされる溶け落ちた核燃料の取り出しに着手できておらず、見通しは不透明だ。
 除染作業が進み、全町避難が続く双葉町など福島県の7市町村に残る帰還困難区域を除き、避難指示は解除された。しかし、旧避難区域の居住率は約3割にとどまる。